ビデオ通話でも、ポッドキャストの収録でも、配信や動画制作でも、音質は重要です。音が悪いと聞き取りにくく、聞く側も疲れてしまいます。このガイドでは、プロのような音で話すために必要なことをすべてまとめました。
部屋の音響:いちばん大きな要素
音の良し悪しに最も大きく影響するのは、話している環境です。安いマイクでも音響対策をした部屋なら良い音になり、高価なマイクでも浴室ではひどい音になります。
硬い面は音を反射し、反響や残響を生みます。その結果、声が遠く素人っぽく聞こえてしまいます。
- 布製のもの:ラグ、カーテン、布張りのソファ、ベッドは音を吸収します
- 本棚:本は音を拡散・吸収するのにとても効果的です
- クローゼット:服がたくさん掛かったクローゼットの中で録ると、意外なほど良い音になります
- 避けたい場所:家具の少ない部屋、キッチン、浴室、硬い床とむき出しの壁に囲まれた空間
簡単なチェック:部屋で手を叩いてみましょう。はっきりした反響や「キーン」という響きが聞こえたら、音響対策が必要です。
- 無料:カーペット、カーテン、布製の家具がある部屋に移動する
- 20〜50ドル:背後や両側の壁に、引っ越し用の毛布や厚手のカーテンを掛ける
- 50〜100ドル:卓上タイプのリフレクションフィルター(効果はあるが、部屋の音響そのものは改善しない)
- 100〜300ドル:吸音フォームパネル。最初に音が反射する場所(左右の壁)を優先する
- 200ドル以上:プロ用の吸音パネル、またはロックウールで自作したパネル
優先順位:まず背後の壁、次に左右の壁、最後に正面の壁を対策しましょう。
最良のノイズ対策は、マイクに届く前にノイズをなくすことです。
- 窓とドアを閉める:車の音、近所の生活音、屋外の音を遮ります
- 扇風機やエアコンを止める:静かな空調でも、はっきりわかるブーンという音が入ります
- 通知をオフにする:スマホをマナーモードにし、パソコンの通知音も切ります
- キーボードの音:メカニカルキーボードはうるさいので、通話時は静音スイッチやメンブレンのキーボードも検討しましょう
- パソコンのファン:ファンがうるさいノートPCは、マイクから離して置きます
ノイズの種類ごとの詳しい対処法は、背景ノイズを減らす方法で解説しています。
マイクの位置
マイクをどこに置くかで、音質は劇的に変わります。少し調整するだけでも大きな違いが出ます。
マイクとの距離は、音量、低音の出方、背景ノイズの拾い方に影響します。
- 近すぎる(2〜5cm):低音がこもる(近接効果)、「パ行」「バ行」で吹かれが起きる、息の音が入る
- 遠すぎる(30cm以上):薄く遠い音になり、部屋の反響が増え、S/N比も下がる
- USB・コンデンサーマイクの理想:口から10〜20cm
- ダイナミックマイクの理想:5〜10cm(近くで使う前提で設計されています)
目安:コンデンサーマイクならこぶし1つ分、ダイナミックマイクなら指1〜2本分の距離です。
マイクを口の真正面に向けるのが、いつも正解とは限りません。
- 軸を少しずらす:マイクを15〜30度横に傾けると、破裂音を抑えられます
- 口より低い位置に:マイクを口の下に置いて上向きに傾けると、息が直接かかりません
- サイドアドレスとエンドアドレス:マイクのどこが「正面」なのかを把握しましょう。USBマイクはサイドアドレス型が多いです
サイドアドレス型のマイク:上からではなく、ロゴがある側面に向かって話します。Blue Yetiなどでよくある間違いです。
ポップガードは、「パ行」「バ行」「タ行」で出る息の塊を受け止め、音の歪みを防ぎます。
- メッシュ製ポップガード(10〜20ドル):グースネックで取り付ける定番の丸型
- ウインドスクリーン(5〜15ドル):マイクにかぶせるスポンジ。効果は控えめだがコンパクト
- 金属製ポップガード(20〜40ドル):丈夫で手入れが簡単。音の変化が少ないという声も
- 自作:針金ハンガーに薄手のストッキングを張れば、急場しのぎになります
ポップガードは自分とマイクの間、マイクから2〜5cmの位置に置きます。
マイクはスタンドやマウントを通じて振動を拾います。
- マイクアーム:マイクを机から浮かせ、振動の伝わりをほぼなくします(25〜100ドル)
- ショックマウント:ゴムバンドでマイクを吊り、振動を吸収します(20〜50ドル)
- 低予算の方法:マイクスタンドの下に、たたんだタオルやマウスパッドを敷きます
最強の組み合わせ:マイクアーム+ショックマウントで、プロ並みの防振と自由な位置調整が手に入ります。
ゲインと音量の設定
ゲインを適切に設定すれば、聞き取りやすい音量を保ちつつ、音割れも防げます。
目標は、声のピークが最大値の70〜80%程度に収まり、大きな声にも余裕がある状態です。
- 小さすぎる:相手が音量を上げたとき、背景ノイズまで目立ってしまいます
- 大きすぎる:大きな音で音割れ(クリッピング)が起きます。ひどい音になり、後から直せません
- ちょうど良い:メーターの上から3分の1あたりでピークになり、赤や最大値には届かない
確かめ方:システムのサウンド設定かマイクテストを開き、普段の声量で話したあと、笑ったり声を張ったりして、ピークで音割れしないか確認します。
ゲインは、信号経路のさまざまな段階で調整できます。
- 本体のゲインつまみ:USBマイクやオーディオインターフェースにあります。最初にここを調整します
- システムの入力レベル:WindowsやMacのサウンド設定。微調整に使います
- アプリの設定:ZoomやTeamsなどには、独自のマイク設定があります
- マイクブースト:Windowsの機能で+10/+20dB上げられます。必要なときだけ使いましょう
おすすめの手順:まず本体のゲインで十分なベースレベルを作り、必要ならソフトウェアで微調整します。
多くのアプリには「マイク音量を自動調整」のような機能がありますが、これが問題の原因になることがあります。
- 問題1:ポンピング。無音の間に音量が上がり、背景ノイズまで増幅されます
- 問題2:レベルが安定しない。大きな音のあとに声が小さくなります
- 役立つ場面:よく動き回る場合や、声量の変化が大きい場合
おすすめ:Windowsのサウンド設定とビデオ通話アプリの両方で自動ゲイン調整をオフにし、手動で一定のレベルに設定しましょう。
話し方のテクニック
機材と同じくらい、話し方も大切です。話し方が良ければ、どんなマイクでも音が良くなります。
音量は距離によって大きく変わります。15cmから30cmに離れるだけで、音量は半分になります。
- 意識する:話しているうちに、つい後ろにもたれたり顔を横に向けたりしがちです
- マイクアームを使う:マイクが常に正面に来る位置に固定します
- 目印をつける:机に小さな印をつけて、座る位置の目安にします
ビデオ通話では音声が圧縮されるため、明瞭さが落ちます。はっきり話すことで、相手に伝わりやすくなります。
- 少しゆっくり話す:早口だと言葉がつながって聞き取りにくくなります
- 声をしっかり出す:喉ではなく、お腹から声を出しましょう
- もごもご話さない:口を開けてはっきり発音しましょう。大げさではなく、聞き取りやすくするためです
- 話の区切りで間を取る:相手が理解する時間ができ、「えー」「あのー」も減ります
騒がしい環境では、プッシュトゥトークや手動のミュートで音声をクリーンに保てます。
- キーボードショートカット:ほとんどのアプリで、プッシュトゥトーク用のキーを設定できます
- ミュートの切り替え:普段はミュートにしておき、話すときだけ解除します
- 物理ミュートボタン:ミュートボタン付きのUSBマイクなら、ソフトウェアより素早く操作できます
Zoomのコツ:スペースキーを押している間だけミュートが一時解除され、離すと再びミュートになります。
ソフトウェアによる補正
ソフトウェアで音をきれいにすることもできますが、悪い環境を直すためではなく、すでに良い音をさらに磨くために使うのが理想です。
最新のAIノイズ除去を使えば、背景ノイズを劇的に減らせます。
- NVIDIA RTX Voice/Broadcast:RTXシリーズのGPUがあれば無料。品質も非常に優秀です
- Krisp:どんなパソコンでも使え、週60分まで無料。無制限は月8ドル
- アプリ内蔵の機能:Zoom、Teams、Meetにはいずれもノイズ抑制機能があります。オンにしましょう
- Discord:Krispを使った優秀なノイズ抑制機能を内蔵しています
注意点:ノイズ抑制を強くしすぎると、声がロボットのようになったり、小さな声が途切れたりします。まずは中程度の設定から始めましょう。
ほかのノイズ除去ツールやプラットフォーム別の設定は、背景ノイズを減らす方法をご覧ください。
ビデオ通話アプリには、それぞれ確認しておきたい音声設定があります。
Zoom:
- 設定 →「オーディオ」→「背景雑音を抑制」(「自動」または「低」に設定)
- 「マイク音量を自動調整」をオフにする
- 音楽や音声を共有するときは「高忠実度音楽モード」をオンにする
Microsoft Teams:
- 設定 →「デバイス」→「ノイズ抑制」(自動、高、低、オフ)
- 「マイクの感度を自動的に調整する」をオフにする
Google Meet:
- 設定 →「音声」→「ノイズキャンセル」のオン/オフ
- AIによるノイズキャンセルが自動で適用されます
高度なツールを使えばさらに音を良くできますが、音響の知識がある程度必要です。
- イコライザー(EQ):低域(80Hz以下)をカットしてゴロゴロ音を取り除き、明瞭さのためにプレゼンス帯域(2〜5kHz)を少し持ち上げます
- コンプレッサー:音量差をならします。大きなピークを抑え、小さな部分を持ち上げます
- ノイズゲート:しきい値より小さい音をミュートし、話していないときの背景ノイズをカットします
- ディエッサー:歯擦音が気になるとき、耳につく「サ行」の音を抑えます
ツール:OBS Studio(無料)、VoiceMeeter(無料)、GoXLR(ハードウェア)、Elgato Wave Link(Waveシリーズ用)
ヘッドホンを使う
スピーカーではなくヘッドホンを使えば、相手の声をマイクが拾ってしまうのを防げます。
- エコーが起きない:相手に自分の声が返って聞こえることがなくなります
- 聞き取りやすい:部屋の音に邪魔されず、相手の話がはっきり聞こえます
- 遅延が少ない:会話のやり取りが自然になります
- プライバシー:周りの人に通話の内容が聞こえません
どんなヘッドホンでもOK:高価なものは不要です。安いイヤホンでもエコーの問題は解消できます。
通話前のチェックリスト
よくある悩みと解決策
- 近づく:マイクとの距離を10〜20cm以内にします
- 柔らかい素材を増やす:毛布を掛け、ラグを敷き、カーテンを閉めます
- 部屋を変える:タイル張りのキッチンより、カーペット敷きの寝室のほうが良い音になります
- マイクの向きを確認する:正しい面に向かって話しているか確かめます
- 小さすぎる:ゲインを上げる、マイクに近づく、最後の手段としてマイクブーストを使う
- 大きすぎる・歪む:ゲインを下げる、少し離れる、音割れしていないか確認する
- 音量が安定しない:距離を一定に保ち、コンプレッサーのソフトも検討する
- 自動ゲインをオフにする:自動レベル調整は音量が不安定になる原因になりがちです
- ポップガードを使う:最も効果的な解決策です
- マイクを傾ける:15〜30度軸をずらし、正面から息がかからないようにします
- 距離をとる:近すぎるほど破裂音はひどくなります
- マイクの横を通すように話す:息がマイクに直接当たらず、脇を抜けるようにします
- 発生源を断つ:扇風機を止め、窓を閉め、通知をオフにします
- S/N比を上げる:マイクに近づき、ゲインを下げます
- AIノイズ除去を使う:RTX Voice、Krisp、アプリ内蔵の機能など
- プッシュトゥトークを使う:騒がしい環境では、話していないときはミュートにします
- 指向性を確認する:カーディオイドのマイクは、ノイズ源が背後に来るように置きます
- ヘッドホンを使う:いちばん効く対策です。マイクがスピーカーの音を拾わなくなります
- スピーカーの音量を下げる:スピーカーを使うしかないなら、音量を小さめにします
- エコーキャンセルを有効にする:アプリとシステムの設定でオンにします
- スピーカーをマイクから離す:物理的な距離も効果があります
今の自分の声がどう聞こえるか試したい方は、マイクテストで音声を聞きながらレベルを確認してみてください。マイクの接続や設定でお困りならマイクの設定ガイドを、マイクがどう音を拾うのかを知りたい方はマイクの指向性のガイドをご覧ください。